作品データ
- 区分:一般ノベル- 著者:伊吹有喜、吉實恵- 価格:924円- 配信日:2018-05-02
どんな作品か
『四十九日のレシピ』などで知られる伊吹有喜のデビュー作にあたる長編小説である。心身をすり減らして休職した中年の男性が、亡き母ゆかりの海辺の町を訪れ、そこで暮らす女性と出会うところから物語が始まる。潮の香りが漂う小さな町を舞台に、傷ついた大人たちがゆっくりと再生へ向かう姿を描いた、しっとりとした大人の物語だ。
読みどころ
派手な事件ではなく、日々の食事や会話、土地の風景の積み重ねで人の心がほどけていく過程を丁寧に追うのが本作の持ち味である。それぞれに事情を抱えたふたりの距離が少しずつ縮まる様子は、大人の恋愛小説としても再生の物語としても読める。「風待ち」という言葉が示す、動き出す時をじっと待つ時間の描き方が美しい。
こんな人に
疲れた心を癒やす小説を探している人、海辺の町を舞台にした静かな物語が好きな人に薦めたい。伊吹有喜の原点に触れたい読者にも良い一冊である。