作品データ
DMMブックスの小説(日本文学)。著者は月村了衛。2,200円・2024年10月17日配信。第172回直木賞の候補となった長編で、社会派ノワールとして受け止められた一作です。
どんな作品か
バブル期の京都を舞台に、日本仏教の大宗派に属する若き僧侶・志方凌玄を追う物語です。取り壊される仏堂の現場に立ち会ったことから、凌玄は自分の宗派が抱える不動産取引の不正に気づきます。腐敗した教団を正すという志を掲げながら、暴力団やフィクサー、財界人、市役所職員といった古都の金脈に群がる人々の側へ、自ら踏み込んでいきます。
読みどころ
信仰を語る言葉と、土地と金をめぐる生々しい交渉とが同じ人物のなかで並び立つ構図が、この小説の芯にあります。寺と行政、企業、裏社会が絡み合う仕組みが具体的に書き込まれ、京都という街の別の顔が立ち上がってきます。目的のために手段を選ばない主人公が、どこまで自分を保てるのかという緊張が続きます。
こんな人に
組織の腐敗と個人の変質を描く長編が好きな人、宗教や不動産をめぐる社会派の犯罪小説を読みたい人に。