作品データ
- 区分: 一般ノベル- 著者: 夏目漱石- 価格: 649円- 配信日: 2024-05-31
どんな作品か
夏目漱石の後期を代表する長編小説である。学者の長野一郎は、鋭すぎる知性ゆえに妻・直の心すら信じられず、孤独を深めていく。物語は弟・二郎の視点から語られ、一郎は二郎に対し、直の貞操を試してほしいとまで頼み込む。他者の心は決してわからないという近代人の苦悩を、兄弟と夫婦の関係の中に描き出した日本文学の古典だ。
読みどころ
本作の核心は、考えることをやめられない人間の地獄である。一郎は疑い、苦しみ、それでも思索を手放せない。「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか」と語られる彼の煩悶は、百年以上を経た今も切実に迫ってくる。『こころ』へと続く漱石晩年の主題、エゴイズムと孤独の探求が最も張り詰めた形で現れた一作であり、静かな筆致の奥で精神の劇が進行する。
こんな人に
『こころ』を読んだ人が次に進む一冊として最適である。人間関係の底にある孤独を描く文学を求める読者に、時代を超えて応える名作だ。