作品データ
DMMブックスの一般ノベル(日本文学)。著者は柴崎友香。講談社刊、価格1925円、2025年6月25日配信。
どんな作品か
「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」が、ある日、自宅兼事務所の部屋に帰れなくなってしまう——そんな設定から始まる連作の探偵小説です。急な坂ばかりの街、夜にならない夏の街、雨季の始まりの街など、次々と姿を変える世界を「帰れない探偵」がめぐっていきます。各話が「今から十年ぐらい後の話。」という一文で始まる、時間と空間の輪郭がゆらぐ独特の物語です。
読みどころ
事件の謎解きそのものよりも、めぐる街々の空気や手ざわりを丹念に描き出す柴崎友香ならではの筆致が光ります。少し先の未来を舞台に、「帰る」とはどういうことかを静かに問いかける構成が印象的です。現実と地続きでありながら、どこか夢のような感触を残します。
こんな人に
通常のミステリとは違う、実験的で詩的な物語世界に浸りたい人、柴崎友香の作品世界が好きな人におすすめです。