作品データ
- 区分: 一般ノベル- 著者: 窪美澄- 価格: 658円- 配信日: 2020-04-08
どんな作品か
直木賞候補にもなった窪美澄の連作短編集である。富士山を望む地方の町で、介護の仕事に就く日奈と海斗。幼なじみのように近しい二人の関係は、東京から来たデザイナー・宮澤の出現で揺らぎ始める。介護という仕事の現実、地方に生きることの閉塞、そして誰かを求めずにいられない心。働くことと愛することが分かちがたく絡み合う恋愛小説だ。
読みどころ
窪美澄の真骨頂である、身体の実感を通して心を描く筆致が全編に息づいている。老いた身体に触れる介護の日々と、誰かの体温を求める夜が同じ地続きの生として描かれ、きれいごとではない生々しさが胸に迫る。視点人物を替えながら進む連作の形式によって、すれ違う男女それぞれの孤独が立体的に浮かび上がり、読み進めるほどに切なさが積もっていく。
こんな人に
甘さよりも切実さのある恋愛小説を求める人に向く。働くことのしんどさと生きる実感を、地方の風景とともに描く物語に浸りたい読者に薦めたい一冊である。