作品データ
- 区分: 一般ノベル- 著者: 小川洋子- 価格: 596円- 配信日: 2016-01-30
どんな作品か
『博士の愛した数式』で知られる小川洋子による長編小説である。調香師の恋人が、ある日突然自ら命を絶った。遺されたヒロインは、彼が一切語らなかった過去を辿り始め、やがて自分の知る穏やかな調香師とは別の顔――数学に並外れた才能を示した少年時代の姿に行き当たる。香りと記憶を手がかりに、失われた人の輪郭をなぞっていく静かな物語だ。
読みどころ
香りが記憶を呼び覚ますモチーフと、死者の空白を埋めていく旅の構成が美しく響き合う。声高な謎解きではなく、断片を拾い集めるうちに恋人の孤独と痛みが浮かび上がる語り口は、小川洋子ならではの静謐さである。喪失を抱えて生きることへの眼差しが、読後に長く残る。
こんな人に
静かで密度の高い文学作品を好む人に向く。愛する人をどこまで知り得るのかという問いに惹かれる読者、記憶や喪失を描く物語が好きな人にすすめたい一冊である。